Pamela Jonesが大統領にスバリ言う: 「知的財産法がイノベーションを妨げている」

ホワイトハウスが米国でイノベーションを妨げているものは何かを尋ねている。なら答えてやろうと、Pamela Jonesがズバリ:
「現在の知的財産法(intellectual property laws)がイノベーションを妨げている」

http://www.groklaw.net/article.php?story=2011021108493059
長いブログなのでかいつまんで訳す。

オバマ大統領は合衆国の全員にワイアレスアクセスを提供するこによってイノベーションを促進しようとしているようだが、オンライン状態になってもイノベーションが許されなければ意味はない。

貴方は選択を迫られている。出る釘(=イノベータ)を打つ強引な知的財産法で古いビジネスを守るか、あるいはイノベーション促進するか。両方は無理。現在バランスはイノベーションに不利な方に傾いている。

音楽産業にみる実例

実例で見てみよう。Napsterが出現したとき、それはイノベーティブだった。世界を変えることができたかもしれなかった。このクリエィティブな事業は成功し利益をあげ雇用を増すかわりに法律によって殺された。徹底的に殺された。今でも法律はpeer-to-peerを殺そうとしているので、このテクノロジーはフルに活用されていない。
(なぜこれがイノベーションにとって大きな損失だったかを物語る資料を挙げている)

Grokster判決は2005年に下されたが、これによって音楽スペースにおけるある種の技術革新が死んだ。

これはアメリカの選んだ選択だ。新しい方法でアーチストのためにもっと利益をあげるように法律を変えることはできた。しかし、古いビジネスモデルを保護することを選んだ。そして法律というハンマーで技術革新を止め、地下に潜らせ、自粛させる結果になった。

選択肢はあった。… この分岐点でアメリカはイノベーションを選択しなかった。もしイノベーションが欲しいのなら、それを合法的に呼吸させなければならない。

ロビイスト vs 寮の学生 「ポケットに入る金をとるかイノベーションから湧き出る金を取るか」

当たり前だがロビイストイノベーションのためにあるものではない。もし、政治家がRIAAロビイストにしか耳を傾けなければDRM以外の技術革新はないだろう。… イノベーションは寮に住んでいる学生からくる。彼はロビーできない。しなければいけないということも知らない。当然どうやればいいかも知らない。だらか本当にイノベーションが欲しいならお金を追ってはいけない。お金は自分のポケットに入れることだけ考えるのではなく、イノベーションから湧き出てくる様をvisualizeできなければいけない。(これは政治家に対して金で買われるなと言っている)

DRM

(次のリンクを挙げ反DRM論を説く。DRMが蔓延るとこはイノベーションに良い環境でないと言っている)

DMCA

国会と米国著作権局はDMCAイノベーションと研究に対する影響について警告を受けたが、既存のビジネスを守ること以外にあまり関心がなかったのでこの法律を通した。結果はというと、イノベーションは危険なものになった。研究は萎縮し、(セキュリティー)研究者は米国のカンファレンスに来なくなった。当然ここで研究する者も減った。DMCAをふりかざす企業と監査官を恐れてだ。研究者は脆弱性を発見してもそれを伏せておくようになった。法律を恐れて廃止になる研究プロジェクトも出てきた。Adobeと政府がとったSklyrarovに対する仕打ちを考えると(米国におけるセキュリティー研究を恐れるのも)無理もない。

研究者を恐れさせてどうイノベーションに役立つだろうか? DMCAのような法律がある国そうでない国とではどちらで研究が発達すると思う? … これもイノベーションをとるか既存の企業の利害をとるかの選択だ。

特許

(ソフトとそれ以前の産業との違いを、Ben Klemensの「Math You Can't Use」を長々引用して解説)
…だからソフトにおいて特許の技術革新への弊害は実在するものだ。
特にFree and Open Sourceにおいて圧制的で非生産的だ。

(Bilski事件でのRed Hatから最高裁への法廷助言書を2ページにわたり引用)

Android

アンデロイドの話をしよう。新しいもので、世界はこれを気に入っている。それでヒットになるとどうなる? 特許と著作権訴訟の氾濫だ。こういう状況はイノベーションを促進するか? これはアンデロイドだけの現象ではない。
さらに経済全体の負荷にもなる。原告が勝ってもその金は技術革新に使われるものではない。なぜなら特許を所有だけしそれにより製品を一切作らない企業による訴訟を法律は許すからだ。
(米国ではnon-practicing entitiesと言って、特許を集めて訴訟を起し金を強請ることを目的とする企業がいくつもある。これらの企業は製品を作るつもりは毛頭ない。ライセンスフィーを取るためだけに特許を集めるのだ。物を実際に作っている企業がマイクロソフトIBMを訴えようものなら巨大なポートフォリオで反撃をうけて即潰されるが、non-practicing entitiesにはこの手が通用しない。なので、マイクロソフトですらかなりの額を取られている。物を作る意思が全くない者に有利、逆に言えば物作りをする者のみが危険にさらされる本末転倒なシステムになってしまっている。上の文はこの状況を言っている)
… 法律が過保護になるとイノベーションが危くなる。保護というのはそういうものだ。つまり技術革新からの保護ということだ。こういうことははっきり言った方がいい。

ソニー

法律の過保護といえばソニー。ある機能を持った製品を売り客から金を取った後でその機能を奪う--しかも返金無しに--こういうことを許す法律はどんなものだろう。ソニーps3をOtherOS機能をつけて販売し、これによりLinuxで遊んだり仕事をすることが可能になった。しかし、自家製ゲームができるようになると、「アップグレード」が必要としてこの機能を奪ってしまった。
これに関しては訴訟があり、ノルウェーの消費者委員会はこのような行動を批判している。でも合衆国ではどう? 天才少年がこの機能を復帰させる方法を見付けた途端にソニーから訴訟攻撃をくらう。法律はソニー側にあり、ソニーがこの少年の評判とキャリアを破壊することを手助けしている。

これも選択だ。…
PS3のOtherOSがソニーから奪われる前これは素晴しくイノベーティブなものだった。(米国海軍がPS3+Linuxでスーパーコンピュータを作った実例: http://www.geekosystem.com/ps3-supercomputer/ から引用)

ハッカーを雇え。George Hotzを人間国宝の卵に。

でもソニーだってゲームを守りズルができないようにすしたいだろう。ここに(セキュリティー確保に)成功している企業の実例がある。http://techcrunch.com/2011/02/07/hack-google-chrome/ (グーグルがハッカー達に賞金をかけてChrome脆弱性を探らせるコンテストに参加した。結局、メジャーなブラウザでハックされなかったのはChromeだけだったという話を出している。)

確かにこっちの方がセキュリティーを破ったものを訴えて潰すより安い。雇って脆弱性を発見させ直せばいいのだ。ハッカーコミュニティーは企業に脆弱性を直す方法を教えてくれることもある。しかしそうすると訴えられることになってしまうこともある。

George Hotzはソニー脆弱性を直す方法を教える意思を示した。ソニーはこの情報を使って彼を訴えた。

もしこの国がイノベーションを求めるならHotzを人間国宝の卵にして、雇用増加と経済活性に繋がる何かを与えた方がいいのではないか? さらにこのような人材は合衆国のサイバーセッキュリティーの強化に使えると思わない? 明白すぎるんだが。

まとめ

私は政治的な人間でもなくポリシーに関わるものでもない。そういう野心もない。… ただ(ホワイトハウスに)問われた「何がUSのイノベーションを邪魔しているか」という質問に対して答えようとしているだけだ。答えは、多大なエネルギーが全てをロックダウンすることに費され、法律がユーザと技術革新に不利な方に傾いていることだ。この状況はイノベーションの促進する土壌を作っているとは言えない。



Pamela Jonesはwww.groklaw.netというサイトを営んでいる弁護士補助員。フリートフトウエア・オープンソースの法律関係のコメンタリーで知られている。Linuxの「知的所有権」をめぐるSCO対Novellでは膨大な書類の内容をgeekがわかるように解説し活躍した。ハッカーコミュニティーの法律問題の声のような存在だ。