日本在住ハッカー・起業家Patrick McKenzieから見た地震と日本の対応


日本在住のHacker Newsメンバー・起業家Patrick McKenzieが英語圏ニュースの報道に不満を感じて日本の状況を自国に伝えている。

「Some Perspective On The Japan Earthquake」「現地から見た日本の地震」とでも訳すべきなのだろうか。
http://www.kalzumeus.com/2011/03/13/some-perspective-on-the-japan-earthquake/

日本の地理の基礎知識

{地理に関しては割愛させてもらう。しかし面白い観察をしている}

本州はデカい。「小さな島国」を自称することがまず無いイギリスよりも大きい。その800マイルの全長はシカゴからニューオーリンズにまで逹っする長さだ。家族や友人を心配させている日本に関する報道は(ニューオーリンズを壊滅した)ハリケーンのカタリナ後にシカゴの市長に電話して「大変だな」と言うようなものだ。

{西洋メディアは地理の知識が乏しく日本は小さいから「島」全部がデレビで見る被害にあったという印象を与えているという指摘だ。}

日本の震災対策

日本で震災に対して徹底した対策が行なわれている。この問題に他のどの国よりもお金を費している。それは震災を何度も体験しているからだ。(tsunamisやtyphoonsが日本語からきている理由を考えたことある?)自衛隊から聞いたこともない県の技術インキュベータの翻訳者まで、政府の全てのレベルで緊急事態の計画やドリルにかなりにかなりの時間を費やしている。

例えば岐阜県大垣市の組織チャートで一番下にある私の震災時の義務はこういうものだった:

  • まず自分の安全を確認
  • 緊急連絡チャートの次の人に自分の安全を告げる。これは毎年一度ドリルした。
  • 英語かスペイン語の通訳が必要な場合に備えて待機する {McKenzie氏は緊急時通訳係だったようだ}

大垣市の人口は15万人。市の震災対策マニュアルには住民の何人が英語圏の人かが記しされている。20人前後だ。{これだけ少数の人達のために}何故英語の通訳者のリストを管理するか?日本語には「過度の準備」という言葉が無いからだ。

もう一つの例。以前、あるシステムインテグレータでエンジニアとして大学のバックオフィスのシステム開発に携わっていとことがある。扱っていたシステムの一つにポータルというものがあって、学生が携帯で授業のスケジュールをチェックすることを可能にするものであった。

このポータルの最初の機能は「緊急事態通告」というものだった。地震後に津波の危険にもかかわらず学生がクラスのスケジュールをチェックして来てしまうことを恐れて、真っ赤な大文字で警告を出すというものだった。全ての画面をオーバーライドして「クラスなんか忘れて今すぐ逃げろ」とい状況を伝えるもので、執拗なまでにテストが繰替えされた。

このシステムのクライアントの多くは東京にいる。名古屋が揺れたとき、次の対応がとられた:

  • 0秒: 揺れているな…
  • 5秒: 震源地はどこ?
  • 15秒: 政府の報告によると東日本沖でマグネチュ−ド8.8の地震。クライアントのうち誰が影響をうけているか?
  • 30秒: 「私はX、私はY、私はZ大学担任のシニアエンジニアです」と各担当エンジニアが宣言する
  • 45秒: 「X大学の緊急コンタクトと電話連絡不可。再試行中…」(電話はすぐ使えなくなった)
  • 60秒: 「X大学の緊急コンタクトと電話連絡不可。X大学における緊急事態を宣言します。X大学の緊急時チェックリストの確認開始」
  • 90秒: 「X大学の緊急システムを遠隔操作により作動。作動確認」
  • 95秒: 二人目のシニアエンジニア:「X大学の緊急システムの作動確認」
  • 120秒: グループのマネージャ: 「X大学緊急システム作動確認。Y大学緊急システム作動確認。 …」

これが起きている間、他のメンバーが他の社員の安全を確認する。

これが震源地から数百キロ離れた小さなオフィスにおける、事態の重大さからすれば{授業スケジュールという}あまり重要でないシステムに対する対応だ。このような対応が文字通り数秒以内に日本中で開始された。

揺れ初めたとき私は強い風かと思った。(日本の建造物は地震で崩壊しないように揺れるように設計されている)窓から外を見て駅を出たばかりの電車が緊急停車していた。これも運転手が訓練通りに行っていることだ。停車した後、状況を乗客に告げ、「地震による迷惑」について詫びを入れるだろう。(これは本当にマニュアルに入っている)
{震災など人間に阻止できない現象について謝るという発想は西洋に無くかなり違和感があるものだ}

殆どが機能した

電車を例にしよう。列車四本が津波にさらわれた。それ以外の全てが-時速150マイルで走っているものも含めて-が緊急停車し、死者を出すことはなかった。脱線、衝突は無かった。地震における日本鉄道のストーリーは絶え間なく機能して止まないシステムの物語だ。
本州の大部分においてはこれが実際の状況だった。飛行機は落ちず、ビルは立ち続け、秩序は保たれた。

大垣と名古屋の間にはビール工場があり、そこには巨大なビールボトルのようなタンクに高圧のビールが入っている。そこには大量の危険な薬品が常時保管されている。それはヒーズをつけたら燃料爆弾とも思えるようなものだ。しかし、どれも爆発なんかしなかった。

東の方では{メディアが過剰に取り上げたがるという意味で}写真写りのいい事故があったが、酸素や水、化学者を混ぜると強度の反応をする薬物を大量に扱うというのは文明においては避けられないことだ。車、医療、食品などがこの産業に依存しているのだから。

日本エンジニアリングのこの1世紀最大の地震に対する反応は圧倒的に設計通りに機能したという他ない。このシステムが機能し機能し機能し続けたために数百万という人間が助かった。{これは誤訳ではない。執拗なまでに機能し続ける様を表わしている。原文:because the system worked and the system worked and the system worked.}

誇張の欠片もなく言う: これ{日本地震に対する反応}は文明の勝利だと。
この国のエンジニアは今週は誇りを持て歩くべきだ。
大くの方が家族の安否を気遣い、また死を悼むなかこのようなことを言うのは不謹慎かもしれないが、これが真実であることに違いはない。

核について話そう

東京電力の福島原子発電所の問題に関してパニックをした報道が多く見られる。これについて語る人は少ないが設計通りに機能した部分も含むのがフェアだと思う。原子発電の知識のある(つまりレポータを除く)人による詳細を読みたい方はこちらを参照: 「何故日本の原子炉に関して心配していないか」 {英文のブログ}

即時の対応 --原子炉を停止する-- は瞬時に計画通りに行われた。 これにより終末論的悪夢的シナリオは避けられた。

冷却関連の重要なシステムにおいて機能しない部分があった。だがメルトダウンは終末論的悪夢的シナリオには至らない。他の全てが機能しない場合でも、最悪なシナリオがゼロが沢山つく高価な処理になるように設備自体が設計されている。

各機能の故障はデザインの想定するものであり、だから冗長手段がいくつもある。全国の数多くシステム障害はニュースにもならない。(a)(一部の日を恐怖におとしいれる)核関係でなく(b)冗長システムがカバーしてくれたからだ。

原子力発電に対する強い社会不安により真実を否定してしまってはいけない: この地震までの数十年間、そしてその最中も、原子発電は非常に安全なものであった。

鉄道が全て予定通りに停車したという話をした。数百という人が電車ごと津波にのまれた。これは悲劇だが鉄道の設計と運営に携った人達はこれ以上の惨事が起きなかったことを誇りに思うべきだ。

現時点、地震による放射線の害は相殺されている: 一方でメルトダウンが発生した。他方では津波により大変に危険な国際線運行が停止した。(飛行機に乗ることが放射線リスクを持つとは一般に考えないが、バナナを食べるという行為についてもそれは言える。現在の放射能の状況は「バナナを食べた」から「デルタのプレミアムカードの持ち主」程度のものだ。)

訳注:

貴方達(合衆国市民)に何ができるか

この地震で起きた最悪のことは数多くの方々が溺れて亡くなったことだ。貴方の被害者への思いと祈りは感謝されるだろう。

この震災は酷いものだが、その規模を考えると比較的軽い被害ですんだと言える。(ここで最初「幸運」という言葉を使った。しかし、運は無関係なので編集した。これは運ではなく数十年にわたる優れたエンジニアリング、計画、そしてチェックリストの追従により、世界の多くの地域なら国家の結末となる大惨事に至っていたところを回避できたのだ)

日本経済は真剣な打撃を受けた。しかし、迅速に回復すると思う。この震災よりもリーマンショックや米国の自動車産業救済のために作り出された安全危機{トヨタ狩りのことを言っている}の方が日本経済に与えたダメージは大きいだろう。

日本のために何ができるかって? 今君達が言っている「私達も日本人だ」などの団結の言葉を二三年取っておいて、次回排他的保護主義が横行したときに貴方の議員に手厳しい手紙を書いてその言葉をコピーすればいい。