AP通信対Techcrunch ~ 既存メディア対ネット

既存のメディアとネット文化との摩擦がユーモラスな形で表面化している。

バックグラウンド:
2008年: AP通信ブログ界が記事から引用するのは著作権違反としてDrudge Reportに対して引用を含む記事の公開停止を要求。そして、引用する場合は支払を求めるライセンスを強制しはじめた。APは大きなバックラッシュをネットから受けた。

APはブログ界からは無断で引用し、しかもリンクも貼らないことが多い。さらに、APのインタビューに応じた人が自分の言葉をブログに書こうとしたら、$17.50払わないければいけないとかいう、滅茶苦茶な状況まで発生する羽目になった。 http://daggle.com/ap-1750-quote-1261

2010年6月: Wootというスタートアップがアマゾンに買収されたことをAPがブログのトップページから引用した発表した。これに対してWootは(冗談まじりで)この引用に対してAPの規約を彼等に適用して、$17.50の支払義務があるというブログを書いた。 http://www.woot.com/Blog/ViewEntry.aspx?Id=13420 金払いたくなければウチの商品を買ってくれたらいいや、と軽く流している。

今日: techcrunchがこのことを報道。Wootとtechcrunchの態度が気にいらないAPのディレクターとのメールのやり取りが始まった。http://techcrunch.com/2010/07/06/ap-woot-oil-spill/

techcrunchはメディア会社と言えるが、ネット文化で育ったもので、既存のメディア大企業とは全く異質文化だ。ブログ界を代表している感がある。一方、APはネットに苛立たしさを感じている既存メディアの代表。このイザコザは些細なことを対象にしているが、これからのメディアをめぐる争いの象徴ともいえる。

APはWootから24語引用し、オリジナルへのリンクはしていない。彼等の言い訳は、「本人にインタビューした」という事実。しかし、そのインタビューからの言葉はたったの3言葉 「I’m really excited」。

どうも、APなどの態度を見ていると、「俺達はプロなんだから君達のブログなどから自由に引用してもいい」。しかし、立場が逆になると「こっちは商売でやっているだから金払え」ということらしい。

techcrunchは創始者のArringtonをはじめ挑発的な個性派で知られている。ネット上でよく波風をおこすことで有名だ。APにイチャモンつけられてただで引き下がる連中じゃない。

techcrunchの記者MG Siegler氏は「インタビューしたから無料で引用していい」というAPの理論を突き返し、ディレクターのPaul Colford氏とインタビューしたとして、メキシコ湾原油流出事故の記事を丸々コピペしてしまった。

http://techcrunch.com/2010/07/06/ap-woot-oil-spill/

これはかなり挑発的だ。訴訟になりかねない。でもtechcrunchは「タイマン上等」というスタンスだ。良い度胸している。楽しみだ。