ChromeのH.264サポート廃止: Googleのユーザ無視の傲慢か? それともオープンなウェブに貢献するものなのか?

H.264騒動に関する英語圏での意見が色々出回ったのでまとめてみる。

追加:

googleH.264サポート停止の声明

http://blog.chromium.org/2011/01/html-video-codec-support-in-chrome.html

  • WebM (VP8) と Theora video codecs をサポート
  • open innovationのためh264のサポートを廃止
  • そのリソースをオープンなcodec技術に集中

daringfireballからGoogleへの五つの簡単な質問

http://daringfireball.net/2011/01/simple_questions

  • h264をドロップしてproprietaryなFlashをサポートするってのはおかしくない?
  • Androidもh264をサポートしなくなる?
  • Youtubeのh264サポートも「オープンイノベーションのために」停止するの?
  • Netflix, Amazon, Vimeo, Major League BaseballなどのサイトはWebMとH264の両方のcodecをサポート すると思う? もししなかったら、chromeユーザはFlashのh264サポート以外でこれをどう見ればいい?
  • chromeがh264をサポートしなくなることが嬉しい人って誰かいるの?

osnewsからDan Gruber(daringfireball)への10個の(あまり簡単でない)質問

http://www.osnews.com/story/24245/10_Questions_for_John_Gruber_Regarding_H_264_WebM

あなたはスタンダードによるウェブの推奨すると言いましたが、W3Cはroyalty-freeでない技術の使用を禁止しています。つまり、H.264HTML5のスタンダードにはなりえないのです。H.264はroyalty-freeでなくあなたが推奨するスタンダードによるウェブと相反するものなのにどうしてそれを後押しするのですか?
patent trollとして知られている会社に管理されている技術がスターンダートベースのウェブに埋め込まれる危険が見えないのですか? patent trollとして知られている会社がウェブのビデオをコントロールするのがいいことだと思いますか?
Intel以外の全てのメジャーなチップメーカーがWebMを後押ししているのを知っていますか? 2011年第一期にハードによるWebMのサポートが市場に出、今年後半にはもっと出ることは知っていすか?
ヨーロッパ市場ではFirefoxIEを抜いて一番人気のあるブラウザになりました。Firefox4が出ればヨーロッパの殆んどブラウザがH.264でなくWebMのビデオをHTML5で見せることができるようになります。そうなると、2011年にはWebMでビデオを提供した方がいいということになりますか? … ブラウザメーカは明かにWebMを選択しました。
4に関して。あなたはRobert ScobleがAppleFlashを封じ込める努力はFirefoxIEを封じ込めるのと同じだと言ったのに同意しましたよね? では何故、今になって(以前反対した)反Firefox論と同じ理論をWebMに対して繰り広げているのですか? {意訳: AppleFlashをサポートしなかったときは応援していたくせに、GoogleH.264をサポートしないときは掌を返したように反対するの?}
On2はVP3をH.264の前(2000 < 2003年)にリリースしていたことを知っていましたか? だから、MPEG-LAは今Googleの所有するOn2の特許を侵害している可能性が高い。MPEG-LAは威嚇はするけども、それを実行に移せない理由がここにある。何故なら逆に訴えられるから。 {解説: H.264以外の技術は特許で攻撃されるからダメという議論がよく出る。 これを出すのはSteve Jobsを含むMPEG-LAと提携している陣だ。 この言い方ってのは、H.264以外を選ぶなら特許で訴えるよ、という威嚇以外の何物にもならない。 しかし、MPEG-LAは競争相手が特許侵害している…とか言いながら、法廷に出てそれを実証しようとしない。 何故なら、反撃を喰らうから}
10年間続けてMPEG-LAは威嚇しつづけたにもかかわらず、On2,Thero,PVxに対する特許侵害は一つも出ていない。 Xiph Foundation(Theora)が特許侵害回避の協力をオファーしてきたにもかかわらず。{MPEG-LAの「特許侵害」威嚇に嫌気がさしたXiphが「侵害しているところあるなら一緒に探そうじゃねーか!」と返したらMPEG-LAはダンマリ。MSとかSCOがLinuxに対してやっていた中傷活動と同じようなものだ}
あなたは何故アップルがFlashを潰しにかかったときは賛成してたのに、Googleが閉じられ特許下にある似たような技術に同じ対応をしたとき反対するのですか? 何故アップルがオープンなウェブをサポートするのはよくて、グーグルがオープンなウェブをサポートするの悪いのですか? {上にもあったな}
無償のブラウザメーカー(Firefox, Chrome, Operaなど)がH.264サポートするために、ライセンスフィーを支払されるというのは理にかなっていることだと思いますか?OSNewsの読者の言葉で言うと: 無償でブラウザを提供している企業がライセンス料を正当化できると思いますか? 特に無料の選択肢がある場合に。 {これがgoogleの本音だろう}
何故オープンで、royalty-freeで、特許による制約をうけないcodecに反対するのですか?Appleが支援していないからですか? アップルがH.264を捨てWebMをサポートするようになったらそれをよしとしますか? {アップルオタクのDan Gruberに対する嫌味}

Operaも反h264派

http://my.opera.com/haavard/blog/2011/01/13/openness

Operaがこの記事の議論を検証する
http://arstechnica.com/web/news/2011/01/googles-dropping-h264-from-chrome-a-step-backward-for-openness.ars/

1。 「H.264はオープンスタンダードである」
残念ながらH.264は特許による制約を受けたもので、利用には課金される。W3Cの特許に関するポリシーによりオープンスタンダートとは相反するものだ。特にウェブにおいては。「Open」の定義には気をつけよう。H.264はオープンでありえない。お金を払わなければならないから。

2. 「VP8はオープンスタンダードではない」
これは本当だ。VP8はspecifictionによる技術だ。スタンダードにはなっていない。しかし、Googleは誰にでも使用の権利を認め、特許に対するクレームはしておらず、royalty-freeな使用を制限する姿勢も見せていない。よってVP8はオープンなちゃんとしたウェブスタンダードの良き候補になる。

3. 「H.264はある状況においては無償で使える」
H.264は有料だということを忘れてはいけない。小さなユーザベースの製品でもウェブで何かやろうとしたらいつかは財布を開けなくてはならなくなる。MPEG-LAは注射一本目は無料でくれることをはっきりと言った。一度中毒になったら課金され始める。{ヤクの売人が客を作り出す過程と例えにしている} これはおとり販売だ。

4. 「H.264サポートはHTML5によって義務化されていない」
しかし、IE6のように閉じたde facto standardになる恐れがある。これがウェブに対して与えたダメージを忘れてはならない。

5. 「GoogleFlashを含んでいるでしょ。偽善じゃない?」
FlashH.264は違う。FlashプラグインFlashコンテントが沢山あるから含んでいる。H.264はブラウザ自体に組込まれる。ただのプラグインとはわけが違う。

忘れてはならない重要なポイントはFlashは既に広がっているものだ。ウェブで動画をやるにはこれしかない。一方でHTML5のバトルはまだ続いてい、勝者が決っていない。GoogleH.264を捨てればオープンなフォーマットが勝つ可能性も高くなる。

GoogleFlashをバンドルしているかどうかはこの議論には無関係。問題はブラウザのnativeな動画サポートがオープンな技術のよるべきか閉じたものによるべきかだ。

  • H.264はすでに浸透している」

オフラインで浸透しているからってウェブに適しているとは限らない。ウェブではオープンなスタンダードが必要だからH.264はウェブでの動画には不向きだ。

H.264がどこにでもあるからという理論は通らない。YouTubeのようなサイトは動画を圧縮したり変換する。カメラからの生のH.264をそのままウェブに公開することはあまりない。フォーマット変換するなら、H.264を圧縮するのも、オープンなフォーマットに変換するのも同じような手間だ。

7. 「H.264FlashでもHTML5でも使えるから、スムースな移行を可能にしてくれる」

上にも書いたように、殆どのサイトは動画フォーマットを圧縮・変換する。同じ手間でオープンなフォーマットに変換できる。

10. 「Googleの決断はユーザから選択肢を狭める」
"Google's decision gives users fewer choices"

これが問題の中枢部分だ。残念ながら選択肢を奪うのはH.264の方だ。H.264は選択肢を叩き潰そうとするカルテルの所有する閉じたスタンダードだ。

Googleだけがユーザの選択肢を奪うと避難されるのはおかしな話だ。AppleMicrosoftもWebMをサポートしていないんだから。

11. 「VP8はGoogleにコントロールされた独自の技術だ」

WebMのライセンスを読んでください。WebMはgoogleにスポンサーされたオープンソースプロジェクトでそのライセンスにより、無償・自由に入手可能です。

まとめ

H.264は特許により制限を受けた閉じたスタンダードであり、W3Cのオープンなウェブのポリシーに反するもの。… 一方、WebMはW3cの特許ポリシーの精神に準じたものだ。Googleはroyalty-freeな使用を誰にでも認めている。Googleはウェブを閉じるものを否定し、同時にオープンな技術を推進しすることによりオープンなウェブに貢献している。

antimatter15のWebM対H.264における「Open」の曖昧さ

http://antimatter15.com/wp/2011/01/the-ambiguity-of-open-and-vp8-vs-h-264/
各種「Open」の意味をチャートで解説。三色のテーブルを参照。H.264問題を一番わかりやすく説明している。重要なのは「Implementation vs. Distribution」の3色表の「Distribution」カラムだ。H.264だけ「Royalty Free」でない。こう見ると、閉じたウェブの代名詞のFlashは実はH.264よりタチが良いってことに気付く。他のサイトでは見れないH.264の詳細も色々書いてある。

これ書いた奴15歳かよ!? http://antimatter15.com/wp/about/

結論

  • MPEG-LAと提携していないメジャーなブラウザメーカは全て(Firefox, Google, Opera)H.264に反対
  • H.264推進派にはMPEG-LAの息のかかっている奴が多い気がする: MPEG-LA->Apple->daringfireball。MSも。
  • H.264はpatent trollによるおとり販売の罠だ。

リンクが見付からないが、H.264がカメラなどの機材にはびこるようになった過程もMPEG-LAの仕業らしい。MPEG-LAはかなりの曲者のようだ。